第1回 ぐんまの子ども・若者支援フォーラム 実施報告
◆主 催 ぐんまの子ども・若者支援フォーラム実行委員会
◆共 催 群馬県子ども・若者支援協議会
◆開催日 2020年 8月23日(日)
◆開催時間 13:00~16:15
◆開催場所 群馬県公社総合ビル
◆実施内容
第一部 基調講演
講 師 池上正樹氏
(ジャーナリスト/KHJ全国ひきこもり家族会連合会広報担当理事)
第二部 テーマ別分科会
分科会 1 「多様な子どもたちを、私たちはどう支援できるのか?」
分科会 2 「諦めた気持ちから、どう立ち上がることができるのか?」
分科会 3 「居場所と社会参加を考える」
= 実施実績 =
◆来場者数 119名
◆各分科会参加人数 1. 17名
2. 16名
3. 86名
プログラム詳細
◆ 開会式行事 13:00~
司会 佐藤由美子 フリーアナウンサー・キャリアカウンセラー
開会挨拶 湯浅やよい 支援フォーラム実行委員会 委員長
祝 辞 森平 宏 群馬県生活子ども部児童福祉・青少年課副部長
◆ 第1部 基調講演 13:15~
講 師 池上 正樹氏
演 題 「ひきこもりの人たちの心情と周囲の向き合い方」
◆ 第2部 テーマ別分科会 14:30~
分科会 1 「多様な子どもたちを、私たちはどう支援できるのか?」
分科会 2 「諦めた気持ちから、どう立ち上がることができるのか?」
分科会 3 「居場所と社会参加を考える」
◆ まとめ・ふり返り (各分科会より報告) 15:30~
◆ 支援フォーラムアンケート協力のお願い
◆ 夜間中学アンケート協力について説明(担当・群馬県教育委員会 義務教育課)
基調講演
講師 池上 正樹氏 ジャーナリスト・KHJ全国ひきこもり家族会連合会理事
【講師プロフィール】
ジャーナリスト、KHJ全国ひきこもり家族会連合会理事、日本文藝家協会会員。20年以上「ひきこもり」関係の取材を続ける。2012年から毎月都内で開かれている対話の場「ひきこもりフューチャーセッション庵-IORI-」(毎月全国から百数十人が参加)の設立メンバー。NHK『クローズアップ現代』『あさイチ』をはじめテレビやラジオにも多数出演。著書は『ルポ「8050問題」高齢親子“ひきこもり死”の現場から』(河出書房新社、2019年11月)『ルポひきこもり未満~レールから外れた人たち』(集英社新書、2018年9月)『ひきこもる女性たち』(ベスト新書、2016年5月)『大人のひきこもり』(講談社現代新書、2014年10月)など
◆講演会テーマ
「ひきこもりの人たちの心情と周囲の向き合い方」
~ひきこもりの人たちの心情ひきこもり本人への向き合い方地域ができること~
テーマ別分科会
分科会1 「多様な子どもたちを、私たちはどう支援できるのか?」
スピーカー
子ども療育園chouchou 児童発達支援管理責任者 熊田隆貴 氏
児童養護施設 地行園 園長 高橋悦史 氏
NPO法人ターサ・エデュケーション 代表理事 市村均光 氏
ファシリテーター
NPO法人DNA 沼田翔二朗 氏
NPO法人ターサ・エデュケーション 足立崇 氏
◆プログラム 各専門家から提言 (※取り組み等については各施設のホームページより引用)
子ども療育園chouchou 児童発達支援管理責任者 熊田隆貴 氏
<取り組み>障がいを抱える未就学児は約8.6%の割合です。子どもの発達障害はグレーゾーン。
しかし、ここで気づききちんとした療育を受けることで早期の
改善が見込めます。児童発達支援事業CHOUCHOU[シュシュ]
では、発達の遅れがみられる未就学児への早期療育を
「独自の仕組み・プログラム」で行っています。
【ソーシャルスキルや療育訓練等について発言】
児童養護施設 地行園 園長 高橋悦史 氏
<運営について>児童養護施設地行園は、子どもたちとスタッフが共に暮らし、
育っていく温かな家庭的環境をめざしています。小さきもの、
弱きものを愛おしむキリスト教精神を基調として、
愛情豊かで知性に富む人間性ゆたかな施設運営を行っています。
【児童養護施設や施設児童の現状や課題について触れる】
NPO法人ターサ・エデュケーション 代表理事 市村均光 氏
<ビジョン>私たちはどんな環境・状態にある子どもたちも未来に希望を持ち、
自分自身に期待できる社会を目指します。
子どもの育ちは他人事ではありません。可能性をフェアにする。
子どもたちへの社会からの支援が当たり前になること。
すべての子どもたちが未来にときめく社会を実現します。
【フリースクールこらんだむについてスピーチ】
市村氏 提言
大人も人によって相性があるように、子どもと大人でも相性はあります。
だから誰でもその子にとって必要な支援者になり得ることが出来ます。
◆テーマ
「 障害児や施設児童、不登校への子どもの関わり方について 」
ファシリテーターを中心に、各スピーカーが抱える課題や子どもたちの具体的な支援について考える。
※ スピーカーの取り組み・運営等については各施設のホームページより引用
分科会2 「諦めた気持ちから、どう立ち上がることができるのか?
◆プログラム
<プレゼン> 不登校の子どもと向き合った保護者の体験
事例発表 23歳大学生・19歳大学生のケース
「自分の道を見つけた若者の思いと寄り添った家族の体験を伝える」
スピーカー 不登校と向き合う親の会 さくらんぼの実る頃 湯浅やよい
<官民トークセッション>
スピーカー 群馬県子ども・若者支援協議会 飯塚欣彦 氏 / さくらんぼの実る頃 湯浅やよい 氏
テーマ 子どもの未来を考える 「 私たちにできること 」
飯塚 群馬県子ども・若者支援協議会(事務局:児童福祉・青少年課)は、社会生活を円滑に営むうえで困難な状況にある子ども・若者の自立を支援するため、子ども・若者育成支援推進法に基づいて、県や国の相談・支援機関を構成機関として相談・支援のネットワークを作るために設置されました。
困難な状況にある子ども・若者を支援するにはどうしたらいいのか、具体的に何をしたらいいのかと考え
まず高校中退者や中学卒業後に進路が決まらない子どもたちへメッセージを含めて「進む道は必ず見つかる」自立支援ガイドを作成しました。また、民間における支援活動の情報を求めて、さくらんぼの実る頃の親の会などに参加し、支援者と当事者の繋がる様子を目の当たりにしました。こうした民間の人たちが動いている(支援)様子を官は知りません。いろいろな活動を行う人たちのところへ行って話を聞く中で、行政の人たちだけではできない「伴走型」の民間支援を群馬県で広げていくには官と民の連携が必要と考えました。
湯浅 支援者と繋がりあうために全国ひきこもり協同実践交流会の群馬開催を目指しました。行政だけでは行き届かないところ、民間ではできないこと、そして悩みは一人では解決できないことを周知させたい、将来ある子どもたちについて一緒に考えたいと思っていたからです。
飯塚 子育て支援においても「子ども」という柱を立て、切れ目のない支援のために行政の仕組みから繋がりを作らないといけないと考えました。子ども・若者支援協議会では、様々な支援機関と繋がる仕組みを作り、相談員の意識と支援に必要なことを学ぶ機会を設けるともに、継続した支援ができる民間団体を育てることを目的として毎年12月に研修会を開催しています。
湯浅 支援者と協議会の交流を続ける中で「支援フォーラム」の企画が生まれました。
官と民の思いを形にしたものです。悩みを抱えるひとたちに「あきらめないで」と伝えたいと思っています。
(分科会内容抜粋)
<講話> NPO法人日本ゲートキーパー協会 理事長 大小原 利信 氏
テーマ 「 気持ちが落ち込んでしまった、方への安心の声かけ 」
・ゲートキーパー協会が提案する【OKメッセージ】
皆さん右図をご覧ください。Aの〇とBの〇がありますが、Bは一部が欠けていますね。
何処が気になるでしょうか?きっとBの欠けているところに目線が行く方が少なくない
と思います。私たちは相手(子ども)を見ていて「この子は何で出来ないんだろう」と
か「何で学校に行けないんだろう」「出来ない事(欠けているところ)を何とかしてあ
げたい」と思う方がいるのではないでしょうか?もしかしたらその言葉は相手(子ども
)の状況によっては「追い込まれている」「そんなことを言ってもできないよ」などと
感じてしまい、気持ちが落ちこんでしまう可能性があると思います。引きこもりサポー
トほっと倶楽部を運営していて、親として良かれと思って発した言葉が子どもを追い詰
めている事例を数多く見てきました。そのような時にゲートキーパーの立場としての声
かけは【OKメッセージ】です。名前とあいさつをセットにして贈ることで、相手(子ど
も)を認めていますよ…とのメッセージになりますので、相手(子ども)との信頼関係
となってきます。日頃から名前とあいさつをセットの発するようにしてみてはいかがで
しょうか?
分科会3「居場所と社会参加を考える」
スピーカー
ぐんま若者サポートステーション 統括コーディネーター 唐沢文彦 氏
前橋市福祉部社会福祉課保護第4係 副主幹 加藤木啓充 氏
NPO法人はじめの一歩 代表 板垣弘美 氏
NPO法人ぐんま若者応援ネット(アリスの広場) 代表 佐藤真人 氏
ファシリテーター
さわやか福祉財団 新地域支援事業担当リーダー 目崎智恵子 氏
<登壇者の自己紹介と活動紹介>
佐藤
不登校やひきこもりなどの若者の居場所「アリスの広場」を開いています。簡単に自己紹介すると、
私は中学1年から6年間、不登校・ひきこもりでした。そのため大検を受け、2年遅れで大学、大学
院へ進学、卒業後26歳で就職するも職場が厳しく半年で退職。28歳から再び支援を受け、社会復
帰できました。こうした経験から若者の居場所を立ち上げました。
アリスの広場は不登校やひきこもりなどの若者が、好きな時に来て、自由に過ごせる、家でも学校
や会社でもない第3の居場所です。ここの目的はまず外に出ることに慣れること、そして、私やスタッ
フ、アリスの広場に来ている他の若者、そのご家族など、さまざまな人と出会い、話したりする中で
視野を広げることで、次へのステップの場になればと思っています。
通って来ている若者ですが、主に10代半ばから30歳くらいまでとなっています。進学校に在籍し
ていた子、大学中退や社会人経験のある若者などさまざまです。
過ごし方ですが、始めのうちは私やボランティアさんとおしゃべりしたり、慣れてきたら若者同士
でおしゃべりしたりしています。雑談中にふと、悩みごとや自分の過去のことなどを話し始める子
も結構多いです。
また、簡単なお仕事体験としてボランティアさんが経営するカフェや、農園で農業体験などが出来ます。
その他、市営美術館アーツ前橋の協力で「ゆったりアーツ」というイベントを開催したり、アリスの広場では居場所だけでなく、文化・体験活動や就労体験など、さまざまな活動を行っています。
板垣
私たちは2013年からNPO法人として活動しています。お母さん達の相談の場所として、当初はお茶
会と称して、お互いの話を聴き合う会を開いていました。
私自身の子も中学生の時に不登校を経験し、長女の進学先でのPTA活動の経験、不登校の親の会との
繋がり、次女の進学先の定時制高校のPTA役員の繋がりの経験から、この会の立ち上げることを思い
立ち仲間を募ってNPOを立ち上げました。その時に不登校の親の会では、疎外感を感じている人達が
いました。その頃は学齢期を過ぎた20歳以上の人達には相談機関も、気持ちを理解してくれるような
場所もありませんでした。
現在は前橋市でコミュニティカフェとして、居場所と相談・就労体験ができる場所を作っています。
本人たちが興味を持ちそうな講座を開いたりもしています。
取り組みの中で家族を通して、内職をお願いしたりもします。私たちの繋がりの中で依頼して頂いて
いる仕事なので、一般的な内職よりも条件が整っています。私たちの場所への参加、社会との繋がりを広げていくきっかけにもなっています。
各講座も本人が参加しやすい時間を設定しています。地域の人たちも参加できるようにしており、自然な交流ができる機会を作るようにしております。
どの活動も最初のハードルは低く、彼らの不安に寄り添う工夫をしています。
少しずつ人に対する恐怖心などが薄れていくようなサポートを心がけています。
加藤木
私は前橋市役所で精神保健福祉士という資格で仕事をしております。今日のテーマに関連するところ
では、平成30年3月まで前橋保健所におりまして、ひきこもりの若者の家族の教室を開いておりまし
た。ご本人はなかなか相談に来られることはないので、ご家族に来ていただいて、家族を通して当事
者に間接的な支援を図っていくということを行ってきました。家族教室の目標は①ひきこもりの状態
が軽減される②本人が相談機関につながる③何より家族が生活しやすくなることです。家族教室に関
しては今年度も継続しているのですが、コロナ禍の中で集まることが制限されているようです。
他にも保健所の方では、精神福祉士相談として電話・所内面接・訪問指導を行い、メンタルヘルス等
に関する啓発として、講演会などを開催しております。現在、私は福祉部社会福祉課で生活保護業務
に携わっています。
社会福祉課は生活困窮者自立支援法の所管課にもなっております。
唐沢
ぐんま若者サポートステーションの統括コーディネーターをしております。
地域若者サポートステション(通称:サポステ)は、厚生労働省が15歳~49歳までの働くことに悩み
を抱えている方に対して職業的自立ができるよう、就労支援を実施する事業です。現在全国に175ヵ
所設置されています。群馬県内では前橋市と太田市のサテライトがあります。事業実施では、地方行
政機関と連携しております。
学校に在籍しておらず、お仕事をされていない15歳~49歳の方やそのご家族がご利用できます。
若者の就職をサポート、働く準備ができる場所です。今年度から年齢の枠が広がりました。
<フリートーク>
家族サポート、家族から本人への情報の伝え方、ご本人の話の聴きかたの工夫や、褒めること、認めることの大切さなど、日々の実践を具体的な例を交えて報告されました。
支援者同士もネットワークを広げていくことを確認しました。
<まとめ>
目崎
登壇者の実践の話を聴きましたが、1回の相談だけでうまくいかなくても、長く続けていきながら、それぞれの繋がりを広げていくことが大切だと感じました。
実行委員長より
この支援フォーラムは、困難な状況にある子どもと若者と次の道を一緒に探したいと願う人たちが集まり企画し、群馬県子ども・若者支援協議会と共催で開催することができました。
全国津々浦々このような視点で活動またはシンポジウムなどを運営しているところはありますが、群馬県の特徴として「県と共催」であることだと思います。これまで行政と民間は同じ問題を抱えながらもなかなか協働することが出来ませんでした。しかしながらその壁を作っているのは私たち自身でもあったわけです。どうせ協力し合うのは無理だろうと一歩が踏み出せずにいました。これを実現できたことは大きな動きです。若い世代の生きていく力を社会が支えていかない限り解消できません。行政と民間が手を携え合うことでお互いの強みを共有できるのです。
もう一つ重要なことは「支援者が繋がる」ことです。お互いを知ることで、専門知識や活力を活かし合う必要がありると考えました。それぞれの地域には支援の活動をしていらっしゃる方々がたくさんいます。具体的に知ることで強い味方を得ることになり、問題解決の糸口が見
つかります。
子どもと若者の世代が希望を捨てないために共に考え協力し合う、そのために支援フォーラムが存在します。現在第二回に向けて着々と準備を進めているところです。
皆さまのお申し込みをお待ちしています。
フォーラム実行委員長 湯浅 やよい